top of page
検索
  • eat LOVE

eat Love Day 13 / パンとコーヒー


わが家の猫たちはみな性格がちがう。

人懐っこい子もいれば、極度の人見知りもいる。

極度の人見知り、おしりくんは、たぶんまだよしみさんの写真に1枚もでてきていない。

よしみさんの前に姿をあらわそうとしない。

そんなおしりくんは今、なにをするわけでもなくただぼくに横にいる。


今年初めてのeat LOVEは、数ヶ月ぶりのそれで、

ふしぎだが、これまで以上によしみさんが何を撮っているかが気にならなかったみたい。

こんなに猫たちを撮っていたなんて知らなかった。

人見知り女子のキーちゃんが彼女のダンボールハウスから顔をのぞかせている。

その顔に警戒心はあまり感じない。

かれこれ10ヶ月近く通ってくれたことで、

よしみさんは猫たちとの関係も築いているのにちがいない。


ぼくもたぶん実はすごく人見知りなのかもしれないと思う。

会話をする分にはまだいいのだけど、写真を撮られるとなると、

どこかかまえてしまい、表情に演技が入ってしまう。

こう見られたい、こう見られたくない、そういう思惑が表情やら姿勢やらにあらわれる。

写真はそれがくっきりと写ってしまうから厄介。

それを知っているから余計にかまえてしまう。


この日の写真にぼくの顔はほとんど写っていないけれど、

はちみつをたらす様子とか猫を抱く感じとか、ナチュラルな感じがする。

写真を見て、いつものお昼風景って思えた。

だからか、

「こんなふつうの風景を撮って意味があるのかな?」って久々に疑問がわいてきた。

でも、それでいいんだよな。

ぼくはぼくでしかない。


たぶん今日もあと1時間もしたらこの同じテーブルで、

同じようなパンとコーヒーをなじみの皿やカップでいつものカレと食卓を囲む。

いつまでつづくかわからないが、つづけられるかぎりつづけたいと思うぼくらの食卓。


もう、あきらめよう。

テレビや本やインターネットで見て憧れる誰かにはなれない人生を。

だって、何億通りもそれこそ無限にある選択肢の中からぼくはこれを選んだのだ。

たくさんの現実からただひとつ、ここでのこの人との人生を望んだ。

望みつづけているから、それが生みだされつづけている。


毎日寒いけど、あとひと月もしたら春を感じる日が増えているだろう。

春には春の食材があり、ぼくたちの食卓も春めくのだろう。

そんなささやかな変化を見逃さずとらえて、味わって、味わって、

味のしなくなったガムのその味がいいんだよ、みたいに、

いつもの毎日にいつまでも新しい味わいを感じる自分でいたい。

















最新記事

すべて表示
bottom of page